IT ライブラリー − 注目の「ITニュース」(2016.11)
EU 新著作権法案骨子を発表!
−20年ぶりの大改正で“リンク税”導入!?−
□ この度、EU(=European Union:欧州連合)の委員長Jean Claude Juncker(ジャン=クロード・ユンケル)氏は、一般教書演説の中で、Digital Single Market Strategy(:新デジタル著作権戦略)を発表しました(2016年9月14日)。
EUが著作権法を改正するのは1996年に施行された“Telecommunications Act”以来、20年ぶりのことであり、今回の著作権法改正案骨子は、米国の著作権法と対立するものとなっています。
現在の国際的な自由貿易協定の潮流の中で、EUでの著作権保護期間が70年になった場合、その影響は米国、日本にも大きな影響をもたらすことになります。
今回は、EUの新著作権法案の骨子と問題点について、説明します。
□ 現在の著作権法は、EUに加盟する28か国が各々で策定しているもので、EU市民がインターネット上でコンテンツのやり取りをするときに法的な不確実性を生んでいます。これをクリアにして、2020年までに「デジタル単一市場」完成を目指す、もっとも重要かつセンシティブな政策の一つです。
主な改正点は、次の2点です。
(1)検索エンジンで表示される検索結果に対して著作権使用料を課すこと:「副次的著作権」と言われる項目です。新法案では、コンテンツ出版後20年にわたり、出版社は許諾を取っていないコピー使用者に使用料を請求することができます。この著作権は「オンラインにアップされているコンテンツ」にも適用されます。即ち、ニュースキュレーションサービスがオンラインにアップされたコンテンツにリンクを貼る場合も同様で、結果、ユーザーは「リンク税」を課せられることになります。
(2)ビデオ投稿サイトでの著作権侵害の取締強化:従来、GoogleやYahoo!等の検索エンジン運営会社は、検索結果として他者の著作物の一部を表示したとしても、フェアユースの範囲として著作権を侵害したことにはならないとされてきました。また、Youtube等のビデオ投稿サイトに映画やTV番組などの他者の著作物がアップロードされたとしても、責任を問われるのは、アップロードを行ったユーザーのみで、サイト運営者は著作権法上の責任はないものとされてきました。
□ 問題点
(1)副次的著作権の保護立法は、以前、ドイツ、スペイン、及び、ベルギー等で導入されたことがあります。Googleのニュースキュレーションサービスが出版社のニュースにリンクを貼っていることに対して、出版社側が使用料を請求した結果、Googleはニュース配信を停止ました。出版社はトラフィックが約15%減少し、倒産する会社も多数現れました。ハイパーリンクによってニュースをキュレーションするで、新しい読者層を獲得する「市場拡大効果」があることは否定できません。
(2)リンク課税が実行された場合、使用料を支払えるのは、大手企業のみで、中小の出版社やスタートアップは市場に参入できないことになります。結果、イノベーションを阻害するばかりでなく、表現の自由やジャーナリズムの多様性も失われることになります。
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