IT ライブラリー − 注目の「ITニュース」(2018.04)
著作権法改正
−著作物のネット利用拡大!
□ この度、政府はインターネットでの著作物利用を拡大するための著作権法改正案を閣議決定しました(2018年2月23日)。
書籍を電子データ化し、特定の言葉を含む文章をインターネットで検索できるようにするサービスを、著作権者の許諾なしでも可能にすることが柱となっています。今回の法改正は来年(2019年1月1日)施行される予定です。
実現すればキーワードを含む書籍の一覧も表示され、必要な文献を探し易くなります。また、学校が教材として書籍や写真をネット経由で生徒に配る際に、補償金を窓口の団体に払えば、著作権者の許諾が不要となります。(※従来、我が国では著作物の無断複製を禁じた著作権法の規定があり、認められていませんでした。)
改正法律案の概要は次のとおりです。
□ 改正の趣旨 デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し、情報関連産業、教育、障害者、美術館等におけるアーカイブの利活用に係る著作物の利用をより円滑に行えるようにすること。
□ 著作権制度について
(1)著作権の保護 他人の著作物(例:小説、論文、新聞、写真、美術、音楽、映画、コンピュータプログラム等)を利用する場合、著作権者の許諾が必要。
ex:権利が付与されている行為:コピー(複製)、ネットワークでの送信(公衆送信)、演奏、上映、譲渡、貸与等
(2)著作権の例外(「権利制限規定」) 法律で定める一定の場合は、著作者の権利が制限され、許諾を得なくても自由に利用することが可能。
ex:引用、報道のための利用、学校の授業での著作物のコピー、教科書への著作物の掲載、図書館での文献のコピー、インターネット情報検索のためのウェブサイトの情報のコピー等
□ 改正の概要 主な改正点は次のとおりです。
(1)デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(第30条の4、第47条の4、第47条の5関係)
・著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等のための著作物の利用について、許諾なく行えるようにする。また、イノベーションの創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い将来新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、ある程度抽象的に定めた規定を整備する。
ex:所在検索サービス(ex:書籍情報の検索)、情報解析サービス(ex:論文盗用の検証)
(2)教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(第35条関係)
・ICTの活用により教育の質の向上等を図るため、学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等について、許諾なく行えるようにする。
(3)障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備(第37条関係)
・マラケシュ条約(下記注@)の締結に向けて、現在視覚障害者等が対象となっている規定を見直し、肢体不自由等により書籍を持てない者のために録音図書の作成等を許諾なく行えるようにする。
(4)アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(第31条、第47条、第67条関係)
・美術館等の展示作品の解説・紹介用資料をデジタル方式で作成し、タブレット端末等で閲覧可能にすること等を許諾なく行えるようにする。
・国及び地方公共団体等が裁定制度を利用する際、補償金の供託を不要とする。
・国会図書館による外国の図書館への絶版等資料の送付を許諾無く行えるようにする。
□ 施行期日 2019(平成31)1月1日 なお、上記「(2)」については公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日。
注@:マラケシュ条約(Marrakesh VIP Treaty|Marrakesh Treaty to Facilitate Access to Published Works for Persons Who Are Blind, Visually Impaired, or Otherwise Print Disabled)とは、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するために締結された条約。
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