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連載“改正民法”
−第1回「消滅時効」
□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されます(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
今回は「消滅時効」について、解説します。
□ 重要ポイント
1.債権の消滅時効期間が、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から10年間に変更
2.「中断」が「更新」に「停止」が「完成猶予」に変更
3.「更新」事由と「完成猶予」事由の整理−協議による時効における完成猶予に関する規定の新設
□ 解 説
1.債権の消滅時効期間が、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、権利を行使することができる時から10年間に変更
・旧法では、債権の消滅時効の原則的な時効期間は「権利を行使することができる時」(客観的起算点)から10年(現行民法166条、167条)、商行為によって生じた債権については5年(商法522条)とし、その他職業別に短期間の時効期間が定められています(現行民法170条〜174条)。
・新法では、従来の債権者が権利を行使できる時(客観的起算点)から10年が経過したときに加えて、債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年が経過したときも、債権は時効によって消滅するとされます(改正民法166条1項)。なお、職業別の短期消滅時効期間を定めている現行民法170条〜174条、及び、商事債権の時効期間を5年間と定めている商法522条の規定は削除されました。
2.「中断」が「更新」に「停止」が「完成猶予」に変更
・旧法においては、消滅時効の進行や完成を妨げる事由として、「中断」と「停止」が定められています。
※「中断」とは、時効進行中に時効の基礎となる事実状態の継続が破られたことを理由に、それまで進行してきた時効期間をリセットして1から時効期間を再スタートさせること。
※「停止」とは、時効完成の直前に、権利者による時効中断を不可能又は著しく困難にする事情が生じた場合に、その事情が解消された後、一定期間が経過する時点まで時効の完成を延期すること。
・新法においては、「中断」「停止」という概念を、意味内容はそのままに、「更新」「完成猶予」という用語に変更されました。
3.「更新」事由と「完成猶予」事由の整理−協議による時効における完成猶予に関する規定の新設
・旧法では、当事者が裁判外で紛争解決に向けた協議を行っているような場合でも時効完成を阻止するためには、時効中断のために訴訟提起等の法的手段を取ることが必要でした。これは、紛争解決の柔軟性や当事者の利便性を損なうとの批判がなされていた論点です。
・新法では、当事者間で協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録によってされた場合には、時効の完成が猶予されます(改正民法第151条)。
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