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連載“改正民法”
−第2回「意思能力」
□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されます(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
今回は「意思能力」について、解説します。
□ 重要ポイント
第二節 意思能力
第3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
【附則】(意思能力に関する経過措置)
第2条 この法律による改正後の民法第3条の2の規定は、この法律の施行の日前にされた意思表示については、適用しない。
□ 解 説
(1)「意思能力」とは、「自己の行為の結果を判断する精神的能力(知的能力)」のことであると、一般的に言われています。その判断は、当該法律行為の内容に応じて判断されます。「意思能力」を欠く者のした法律行為は無効(※@)であるという考えは、判例上、確立し、実務でも定着しています。
意思能力を欠く者の法律行為が無効になるのは、私的自治の原則にあります。すなわち、「自己の意思」に基づいて権利義務関係を形成することを基本としている以上は、行為の意味を理解できない状態にある者の行った意思表示は、「自己の意思」に基づくものとして意思の表示の価値を認めることは適当ではないと考えられているためです。
現行民法においては、明文の規定は存在しておらず、解釈学上、認められてきた考え方です。
(2)意思能力の有無は、本人の客観的な判断能力のみで決まるのではなく、対象とされる意思表示の性質等も合わせて、総合的に考慮して決まります。例えば、「コンビニでジュースを買う」場合と「不動産を売却する」場合では、必要とされる判断能力の程度が異なるからです。
一般的に、7歳程度の幼児、泥酔者、重度の認知症患者、精神病患者などには意思能力がないと考えられています。また、「遺言」という特殊な意思表示については、現行民法同様、遺言能力は15歳以上にしか認められません。
※@ 意思能力を有しない者の相手方からは無効の主張できません(相対的無効)。取消と同様の効果です。無効という効果は、原則として、「誰からでも」無効の主張が可能です(絶対的無効)。しかし、これを「取消権」として構成してしまうと、時効により消滅するリスクが生じ、それでは、意思無能力者の保護に欠けることとなるからです。
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