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連載“改正民法”
−第5回「債務不履行責任」
□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されます(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
今回は「債務不履行責任」(民法415条)について、解説します。
□ 重要ポイント
1.債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし,その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは,この限りでない。(改正民法415条第1項)
2.前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において,債権者は,次に掲げるときは,債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において,その契約が解除され,又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。(改正民法415条第2項)
□ 解 説
1.現行民法第415条は次のように規定されています。
【現行民法第415条】債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも,同様とする。
改正民法では、「債務の履行が不能であるとき」という言葉が、また、新たにただし書きが追加されています。
2.第1項について
(1)「債務の履行が不能であるとき」とは、「本旨不履行には履行不能の類型が含まれる」という従来の判例を明文化したものです。
(2)従来、判例で確立していた「債務者の責めに帰すことができない事由(債務者の免責事由)の立証責任は債務者が負うこと」を整理して記述したものです。
(3)「債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」とは、「故意、過失又は信義則上これと同視すべき事由(判例)」と同じ意味であると考えられます。
3.第2項について
・従来、一定の場合には「履行に代わる損害賠償(填補賠償)請求」が認められています(判例)。改正民法はこの判例法理を明文化したものです。
4.債務不履行責任に関する民法415条は任意規定です。契約において損害賠償について規定がある場合には、契約が優先されます。
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