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連載“改正民法”

−第14回「債務引受」

□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されます(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
 現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
 今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
 今回は「債務引受」について、解説します。

□ 重要ポイント
・債権譲渡が債権者の交代であるのに対し、債務者が交代する場合を債務引受といいます。債務引受については旧民法には規定がなく、従来、判例・学説によって認められてきたものです。
改正民法は、その要件と効果を「併存的債務引受」と「免責的債務引受」に分けて規定を新設しました。

□ 解 説
1.併存的債務引受
(1)意 義   併存的債務引受とは、新しい債務者(引受人)がもとの債務者と並んで債務者となる場合であり、従来の判例は元の債務者と債務引受をした債務者とは連帯債務の関係になるとしていました(最判昭和41年12月20日)。
(2)要 件   併存的な債務引受については、債務者と引受人の関係は連帯債務です(改正民法第470条第1項)。(なお、改正民法では、連帯債務の規定について相対効が原則。)また、保証契約と同様に、債務者の意思に反しても債権者と引受人の間で成立します(改正民法第470条第2項)。
さらに、債務者と引受人との契約も、債権者の承諾があれば有効に成立します(改正民法第470条第3項)。その場合、第三者のためにする契約と同じ方式になります(改正民法第470条第4項)。
(3)効 果   @引受人は引受の効力が発生したときに、債務者が有していた抗弁を債権者に対抗できます(改正民法第471条第1項)。
 A債務者が債権者に対して取消権や解除権を有する場合に、履行拒絶をすることが可能です(改正民法第471条第2項)。
 B相殺については、連帯債務に関する規定により履行拒絶権があります(改正民法第439条)。

2.免責的債務引受
(1)意 義   免責的債務引受とは、債務が同一性を維持して新債務者に移転し、元の債務者が債権関係から離脱する場合をいいます。
(2)要 件   免責的債務引受は、引受人と債権者との契約によって成立し、債権者が債務者に対してその契約が成立したことを通知することによってその効力が生じます(改正民法第472条第2項)。また、免責的債務引受は、引受人と債務者間で契約し、債権者が引受人に対して承諾した場合でも成立します(改正民法第472条第3項)。
(3)効 果   @債務者が主張できる抗弁には、債務者の有する相殺権は含まれません(改正民法第472条の2第1項)。
 A債務者が取消権や解除権を有する場合、引受人に履行拒絶権が認められています(改正民法第472条の2第2項)。
 B引受人が自ら債務を履行しても、旧債務者に求償することはできません。ただし、引受人と債務者の合意によって引き受けた場合は、委任事務処理費用として請求できる場合があります(改正民法第472条の3)。
 C引受人が設定した担保については引受人の承諾は不要です。引受人以外が設定した担保については、債務者が提供した場合を含めて設定者の承諾が必要となります(改正民法第472条の4A)。
 D保証債務を存続させるには,保証人の書面(電磁的記録による場合も書面とみなす)による承諾が必要です(改正民法第472条の4BCD)。


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