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連載“改正民法”
−第18回「消費貸借契約」
□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されました(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
今回は「消費貸借契約」について、解説します。
□ 重要ポイント
1.書面等でする諾成的消費貸借の創設
2.準消費貸借の規定の改正
3.利息に関する規定の創設
4.貸主の担保責任等に関する規定の改正
5.期限前返還に関する規定の整備
□ 解 説
・消費貸借とは、当事者の一方(借主)が相手方(貸主)から金銭その他の代替性のある物を受け取り、これと同種、同等、同量の物を返還する契約のことです。この内、受け取る物が「金銭」であるものを金銭消費貸借契約といいます。 すなわち、金銭を受け取る代わりに、それと同額の金銭(利息付の場合は利息も含む)を返す契約です。
1.書面等でする諾成的消費貸借の創設
旧民法下でも、判例は要物性を緩和し、口頭での消費貸借契約の成立を認めていました。それゆえ、契約成立を巡って争いになる事案がありました。改正民法では、貸し借りの口約束は法的効力を有しないことになりました。他方、電磁的記録によってなされたときは、書面によってされたものとみなされます(改正民法第587条の2第4項)。すなわち、電子メールで約束した場合も契約が成立します。
2.準消費貸借の規定の改正
旧民法では、消費貸借によらない物の返還債務を消費貸借の目的とする準消費貸借を規定していました(旧民法第588条)。また、判例 では、消費貸借による物の返還債務を消費貸借の目的とする準消費貸借も認められていました(大審院大正2年1月24日判決)。改正民法ではこれを明文化する規定が設けられました。
3.利息に関する規定の創設
旧民法では、利息を請求するためにはその旨の特約が必要でした。改正民法では、その旨を明文化しました。なお、利息が生ずるのは、「物を受け取った日以後」であることが規定されました(改正民法第589条)。
4.貸主の担保責任等に関する規定の改正
(1)利息付きの消費貸借における貸主の担保責任 売主の担保責任に関する規定が準用されます(改正民法第559条)。したがって、引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合は、貸主は、借主に対して、代替物の引渡義務等のほか、損害賠償責任等の担保責任を負うことになります。
(2)無利息の消費貸借における貸主の担保責任 贈与者の引渡義務に関する規定(改正民法第551条)を準用し、貸主は、原則として、消費貸借の目的物が特定した時の状態で引き渡せば足りるとされました(改正民法第590条第1項)。ただし、これと異なる合意がなされていた場合は、その内容に従って引渡義務を負い、その内容に応じた履行の追完や損害賠償責任を負うことになります。
(3)消費貸借における借主の返還義務 旧民法では、無利息の消費貸借において目的物に瑕疵があった場合、瑕疵ある物の返還に代えて、その物の価額を返還することができるとされていました(旧民法第590条第2項)。この点、瑕疵ある物を調達して返還が困難であるという点は利息付きの消費貸借でも同様であるため、改正民法では、利息の有無にかかわらず、貸主から引き渡された物が種類または品質に関して契約内容に適合しないときは、借主はその物の価額を返還することができると規定しています(改正民法第590条第2項)。
5.期限前返還に関する規定の整備
旧民法では「期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない」と規定されていました(旧民法第136条第2項)。例えば、利息付消費貸借の期限前弁済の可否や弁済期までの利息の支払の要否については、争いとなるケースがありました。改正民法では、返還時期を定めた場合でも、借主はいつでも返還することができるとし、これによって損害を受けた貸主は、借主に対してその賠償を請求することができることを明確化しました(改正民法第591条第2項、第3項)。
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