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連載“改正民法”

−第20回「請負契約」

□ 2020(令和2)年4月1日より、改正民法が施行されました(「民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)」、平成29年5月26日成立、同年6月2日公布)。
 現在の民法(債権関係)は1896(明治29)年に制定されました。債権法は取引社会を支える法的な基礎であるにも関わらず、約120年もの間、ほとんど改正がなされていません。
 今回の改正は、社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かり易いものとするために、実務で通用している基本的なルールを明文化したものです。
今回は「請負契約」について、解説します。

□ 重要ポイント
1.注文者が受ける利益の割合に応じた部分的な報酬請求権の明文化(改正民法第634条)
2.請負人の担保責任に関する規定の改正
(1)修補請求権
(2)解除
(3)期間制限
3.注文者の破産手続開始後の解除権に関する改正(改正民法第642条1項ただし書)

□ 解 説
1.注文者が受ける利益の割合に応じた部分的な報酬請求権の明文化(改正民法第634条)
(1)改正民法は、従来の判例を踏まえ、その範囲を拡大して、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬請求権を認めました。次の二通りのケースです。
@ 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき(改正民法第634条1号)
A 請負が仕事の完成前に解除されたとき(改正民法第634条2号)
(2)注文者の責めに帰すべき事由によって仕事を完成することができなくなった場合には、危険負担の規定(改正民法第536条第2項)が適用され、請負人は、注文者の責めに帰すべき事由があることを主張立証することによって、仕事が完成していない部分も含め、報酬の全額を請求することができます。

2.請負人の担保責任に関する規定の改正
(1)修補請求権  旧民法第634条第1項本文は、売買の場合に目的物の修補等による追完請求を認める改正民法第562条の規定が請負の場合にも準用される(改正民法第559条)ことに伴い削除されました。「瑕疵」の文言が「契約の内容に適合しない」に変更されただけであり、実務への影響は殆どないものと考えられます。
 他方、旧民法第634条1項ただし書は、瑕疵が重要な場合には、修補に過分の費用を要するときでも請負人は修補義務を免れないと解されており、請負人が過大な負担を強いられてきたことから、改正民法において削除されました。
(2)解除  @ 改正民法において、契約の解除一般について債務者の帰責事由を要件としない旨の改正がなされたため(改正民法第541条〜543条)、旧民法第635条本文の規定は、意義が消滅したため削除されました。
 また、旧民法635条ただし書の規定は、注文者の利益や社会経済上の利益は小さく、このような場合に解除を制限することは必ずしも合理的とはいえない状況にあったため、同条本文と同時に削除されました。
(3)期間制限  担保責任の存続期間については、契約内容不適合を注文者が知ったときから1年以内に通知しないと、担保責任の追及ができないこととなりました。

3.注文者の破産手続開始後の解除権に関する改正(改正民法第642条1項ただし書)
(1)請負人保護の観点から、改正民法第642条1項ただし書において、仕事完成後は、請負人による契約解除が認められない旨の改正がなされました。
(2)旧民法第642条第1項後段では、注文者が破産手続開始決定を受けた場合において、仕事が完成していたときの仕事の報酬等について、請負人は破産財団の配当に加入することができるとされています。この規定は改正民法第642条第2項に移されています。


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