TAX ライブラリー(2014.08)
「配偶者控除」の見直し議論
−改正案の影響について!−
□ 政府の税制調査会では、配偶者控除の見直し議論が本格化しています。配偶者特別控除制度は、所得のない、または、所得の少ない妻を扶養していることで税負担が軽くなる制度です。本年5月23日、調査会は、妻の年収額によって適用の有無が異なる配偶者控除や妻の年収額によって適用金額が変わってくる現行制度を見直して、妻の収入額に関係なく夫婦二人で控除額の合計額が同額となるような制度の創設を計画しています。
配偶者控除廃止論は以前より有力に主張されてきましたが、今回、議論が本格化した背景には、急速な少子高齢化により働き手となる生産年齢人口(15歳〜64歳)が減少していることがあります。労働力を確保して社会の活力を維持するためにも、もはや、女性の社会進出は欠かせません。
□ 現行の配偶者控除制度では、妻のパートなどによる収入が年間103万円以下の場合、妻には所得税は課税されません。それに加えて夫の所得税・住民税の軽減額が最も大きくなります(「103万円の壁」)。また、130万円未満であれば、妻は保険料を負担することなく夫の扶養者(第三号被保険者制度)として、健康保険や国民年金に加入できる仕組みになっています(「130円の壁」)。これは、女性が103万円や130万円を意識しながらパートに従事しているため、結果、女性の社会進出を阻害している要因の一つとなっています。
妻の年収 | 夫婦二人の控除額合計 | |
---|---|---|
本事務年度 | 前事務年度 | |
65万円以下 | 76万円 | 76万円 |
65万円超 141万円未満 | 76万円超 114万円以下 | 76万円 |
141万円以上 | 76万円 | 76万円 |
□ 改正案は、妻の年収を問わず、夫婦二人合計で一律76万円を所得税課税前の所得から控除することを認めるものです。配偶者特別控除も含めて考えると、例えば、妻のパート年収が65万円以下または141万円以上の場合、現行・見直し案ともに夫婦の合計控除額は76万円となり、改正の影響はありません。
しかし、妻のパート年収が65万円超141万円未満では、現行の制度の下では、夫婦トータルの控除額は、76万円超〜114万円が控除額になりますので、控除縮小により負担が重くなることになります。住民税についても同様です。「103万円の壁」を超えても所得控除額が変わらないことから、年収調整をやめる方が増加することでしょう。
また、妻の年収が130万円を超えると社会保険料負担に関する「130万円の壁」が影響する可能性があります。
141万円未満の場合、現行制度では、夫婦トータルの控除額は76万円超〜114万円になります。控除縮小により負担が増します。住民税についても同様です。
今後の議論と年末の税制改正大綱には注目です。