TAX ライブラリー(2019.05)

個人版事業承継税制

−個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予・免除−

□ 中小企業庁は、「2019年版中小企業白書」を公表しました。令和時代を迎えるに当たって求められる経営者の円滑な世代交代や経済・社会構造の変化に合わせた自己変革の取組みについて、事例を交えて分析されています。特に、若い世代への事業承継が企業の業績にプラスの影響を与え、また、事業承継や経営資源の引継ぎのためには早めの準備が必要であることが述べられています。

□ この度、国税庁は、2019(H31)年度の税制改正により創設された制度、「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(個人版事業承継税制)のあらまし」をまとめました。
 個人版事業承継税制は、青色申告(正規の簿記の原則によるものに限ります。)に係る事業(不動産貸付事業等を除きます。)を行っていた事業者の後継者として「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(円滑化法)」の認定を受けた者が、個人の事業用資産を贈与又は相続等により取得した場合において、その事業用資産に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

□ 個人事業承継税制の対象となる「特定事業用資産」とは
 先代事業者(贈与者・被相続人)の事業の用に供されていた次の資産で、贈与又は相続等の日の属する年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていたものをいいます。
 @ 宅地等(400uまで)
 A 建物(床面積800uまで)
 B A以外の減価償却資産で次のもの
  ・ 固定資産税の課税対象とされているもの
  ・ 自動車税・軽自動車税の営業用の標準税率が適用されるもの
  ・ その他一定のもの(貨物運送用など一定の自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産)

□ 個人事業承継税制の適用を受けるための主な要件 次の通りです。

<贈与税>
1.後継者である受贈者の主な要件
(1) 贈与の日において20歳以上であること
(2) 円滑化法の認定を受けていること
(3) 贈与の日まで引き続き3年以上にわたり、特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業等を含みます。)に従事していたこと
(4) 贈与税の申告期限において開業届出書を提出し、青色申告の承認を受けていること
(5) 特定事業用資産に係る事業が、資産管理事業及び性風俗関連特殊営業に該当しないこと

2.先代事業者等である贈与者の主な要件
(1) 贈与者が先代事業者である場合
 @ 廃業届出書を提出していること又は贈与税の申告期限までに提出する見込みであること
 A 贈与の日の属する年、その前年及びその前々年の確定申告書を青色申告書により提出していること
(2) 贈与者が先代事業者以外の場合
 @ 先代事業者の贈与又は相続開始の直前において、先代事業者と生計を一にする親族であること
 A 先代事業者からの贈与又は相続後に特定事業用資産の贈与をしていること

3.担保提供
納税が猶予される贈与税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。

4.申告期限
贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地の所轄の税務署に贈与税の申告をする必要があります。

<相続税>
1.後継者である相続人等の主な要件
(1) 円滑化法の認定を受けていること
(2) 相続開始の直前において特定事業用資産に係る事業(同種・類似の事業等を含みます。)に従事していたこと(先代事業者等が60歳未満で死亡した場合を除きます。)
(3) 相続税の申告期限において開業届出書を提出し、青色申告の承認を受けていること(見込みを含みます。)
(4) 特定事業用資産に係る事業が、資産管理事業参照)及び性風俗関連特殊営業に該当しないこと
(5) 先代事業者等から相続等により財産を取得した者が、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例の適用を受けていないこと

2.先代事業者等である被相続人の主な要件
(1) 被相続人が先代事業者である場合
相続開始の日の属する年、その前年及びその前々年の確定申告書を青色申告書により提出していること
(2) 被相続人が先代事業者以外の場合
 @ 先代事業者の相続開始又は贈与の直前において、先代事業者と生計を一にする親族であること
 A 先代事業者からの贈与又は相続後に開始した相続に係る被相続人であること

3.担保提供
納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。

4.申告期限
相続開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内に、所轄の税務署に相続税の申告をする必要があります。