TAX ライブラリー(2021.05)
新型コロナウイルス感染症の影響による申告・納付等の個別延長について
−個別延長が認められる「やむを得ない理由」とは何か?−
□ 新型コロナウイルス感染症の影響により、期限までに申告・納付等をすることができないと認められる「やむを得ない理由」がある場合には、所轄税務署長に申請し、承認を受けることにより、その理由がやんだ日から2か月以内の範囲で個別延長(個別指定による期限延長)が認められます。
個別延長の主なポイントは次の通りです。
1.個別延長が認められる「やむを得ない理由」とは
新型コロナウイルス感染症に関しては、これまでの災害時に認められていた直接的な被害(帳簿書類等の滅失や資産等への損害など)が生じるなどの理由のほか、次のような理由により、国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、個別指定による期限延長が認められます。
(1)個人・法人共通
@税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含む)が感染症に感染したこと
A納税者や法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること
B次のような事情により、企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務体制が維持できない状況が生じたこと
ア.経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合など、当該部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと
イ.学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること
ウ.新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが求められ、在宅勤務の体制も整備されていない等の理由から、経理担当部署の社員の多くが業務に従事できないこと
(2)個人
@納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実があること
A次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関・自治体等から外出自粛の要請を受けたこと
ア.感染症の患者に濃厚接触した疑いがある
イ.発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある
ウ.基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある
B新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されていること
(3)法人
・感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じたこと
2.個別延長が認められる申告所得税等以外の税目
法人税や相続税といったその他の税目についても、新型コロナウイルス感染症の影響により期限までに申告・納付等が困難な場合も考えられるため、個別延長が認められます。
なお、令和3年4月16日(金)以後に個別延長を申請する場合は、期限までに申告・納付等することができないやむを得ない理由を具体的に確認する必要があるため、申告所得税等の取扱いと同様に、個々の状況を記載する欄がある「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を作成・提出する必要があります。
3.個別延長が認められる申告以外の届出や申請等
申告以外の届出や申請についても、個別延長の対象となるものもあります。例えば、申告所得税について、個別延長の対象となる主な申告・納付等の手続は次の通りです。
@所得税及び復興特別所得税の更正の請求
A所得税の青色申告承認申請
B青色事業専従者給与に関する届出(変更届出)
C所得税の青色申告の取りやめ届出
D損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求
E所得税の減価償却資産の償却方法の届出
F所得税の減価償却資産の償却方法の変更承認申請
G所得税の有価証券・仮想通貨の評価方法の届出
H所得税の有価証券・仮想通貨の評価方法の変更承認申請
I個人事業の開廃業等届出
J国外財産調書の提出
K財産債務調書の提出
※他の税目に関する手続につきまして、期限延長の対象となるかご不明な点がございましたら、ご相談ください。